「選択と集中」を推進し、不採算部門を切り売りするGE
1兆円に及ぶ赤字、株価暴落、配当半減という、かつてない危機に瀕しているGE(ゼネラル・エレクトリック)。まだGEが好調だった頃、日本では「GEこそが企業経営のお手本である」と、もてはやされていました。
GEは次期社長を決定するプロセスをルール化し、熾烈な競争に勝ち抜いた者だけが社長になれるよう厳格に定められています。そして、一度社長に就任すれば長期間運営の実権を握ることができます。
例えば、130年以上に及ぶ歴史の中で、歴代の社長はわずか9人しか存在しません。
さらに、アメリカ企業ならヘッドハンティングが一般化していますが、GEは社外から人を招くことはありません。過去、GEに貢献し、GEを熟知している者でしか社長になり得ることが出来ないのです。
社員の教育方法にも定評があります。年間10億ドルもの資金をリーダー育成に費やし、徹底的に人材の質を上げることに集中しています。
社長になったとしても総時間の30%は教育を受ける必要があるなど、常に人材が進化し続ける文化がある強みが、GEという巨人を作り上げた本質だと言えるでしょう。
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しかし、時代は変わりました。
GEが得意とするハードウェア戦略による利益向上が見込めない、難しい時代になったのです。
インターネット上でアセットを持たずに、莫大な利益を上げるネット企業が台頭するようになり、製造業といった物理アセットを保有しなければならないGEのようなビジネスを持つ企業が、苦境に立たされるようになりました。
ハードウェア戦略が通用しなくなった現代において、GEは「モノを売る」企業から「成果を売る」企業へ、変貌を遂げようとしています。
GEの幹部たちは、恥やプライドを殴り捨て、シリコンバレーで活躍する30歳前後の若き経営者たちとの対話を何度も繰り返し、そこから学びを得ようと努力しました。
その結果、製品やサービス開発において、顧客ニーズに照らして仮説を立てた上で開発に取り組み、その過程で顧客のフィードバックを得て、必要に応じて方向転換を図るクイックで柔軟なビジネススタイルに変化させています。
GEはシリコンバレーが実践しているやり方に完全にシフトしており、既に成果を挙げ始めているのです。
例えば、最新のガスタービン開発は従来の半分もの期間にまで工期を短縮することに成功しました。しかも、その燃焼効率はギネス認定を受けるほどの高性能を有しており、生産性が明らかに高まったのです。
さらに、ソフトウェア事業も推進しており、現在ではIoTソリューションもシリコンバレー方式で開発に取り組んでいます。
GEは今、本気の変革に取り組み、アメリカの巨人として再び生まれ変わろうとしています。
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コメント
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GE は総合電機メーカーでしたが、競争力のない事業を切り離して売却し、10個程度の競争力の非常に強い事業の連合体になりました。
「事業の選択と集中」はもてはやされました。
ところが、20年後の現代の花形産業の半導体・ソフトウエアは、GEが切り離して売り払った事業が開花したものです。
技術の種子をなるだけ社内・グループ内に残してきた日立は、事業の選択と集中が不徹底だったですが、史上最高益をあげ、経営自由度が高く、行き詰まっていません。
技術の進む方向を予測することは難しいです。日露戦争後、満州の利権から日本はアメリカを締め出しました。太平洋を数週間かけて航海し、海の果てへ軍隊を送り込んで戦争をすることは非現実的だったからです。ところが、第二次大戦で飛行機が一般化し、アメリカが海を挟み、数日で行ける隣国として再登場しました。太平洋はアメリカを遮ることができず、アメリカと関係悪化した大日本帝国の命運は尽きました。