米国のCPI(消費者物価指数)はピークアウトが鮮明になってきましたが、住宅市場も減速が鮮明になってきました。

現状は米国の住宅市場は引き続き下落が続く要素がそろっています。CPIを構成する中では住宅は下落が少なかったのですが、住宅市場の下落が続けばCPIのさらなる下落につながってきそうです。

この記事では米国の住宅市場の動きとCPIについて解説していきます。



米国住宅市場は失速中

いくつかの指標をみると米国住宅市場は失速しつつあることが鮮明です。

米国の住宅市場としてはケースシラー住宅価格指数が有名です。ケースシラー住宅価格指数は全米の主要都市圏の一戸建て再販価格を集計し、2000年1月を100として指数を算出する指数です。毎月最終火曜日の朝9時(米東部時間)に 米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが公表しています。

ケースシラー住宅価格指数は2022年6月から下落が続いています。下の図は前年比ではなく数字そのものです。下落していることがよくわかるのではないでしょうか。

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出典:FRED ケースシラー住宅価格指数

直近では住宅ローン金利が急上昇しており、2022年10月後半から7%台をつけました。足元では6%台に戻っていますが、現在でも高止まりしている最中です。

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出典:investing.com 住宅ローン価格の推移

2021年ごろはローンは3%台だった一方で、住宅価格はそれ以上に上昇していたためローンでお金を借りて住宅を買うことが普通でした。賃貸価格も上昇するわけですが、住宅を購入する場合であれば低い金利のローンでお金を借りることでインフレにも対応できるので、賃貸よりも住宅購入が有利となり、住宅価格のバブルは不可避だったというわけです。

ただし、現在ではローン価格が急上昇してきており、住宅価格の上昇率との差が小さくなったため、ローンを組んで住宅を購入するメリットも小さくなってきています。住宅価格の調整時期になっているのも当然の流れといえます。

CPIの30%余りを占める住居費

ちなみに住居費はCPIの30%を占める項目です。以下の表は直近のCPI全体(青グラフ)と家賃(赤グラフ)と帰属家賃(緑グラフ)を表しています。

CPI全体(青グラフ)の前年比はピークアウトしているのが明確ですが、住宅関連項目の下がりはまだ遅れています。

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出典:FRED CPIの内訳

CPIの住宅関連は帰属家賃(Owner’s equivalent rent of residence)(緑グラフ)と家賃(赤グラフ)に分けることができます。

帰属家賃とは(Owner’s equivalent rent of residence)、仮に持ち家に住んでいる人が、その家を借家とした場合に支払う想定家賃のことを言います。

住宅ローンの利率が上がってきているので、住宅購入に魅力がなくなってくると賃貸住宅の人気が高まることはイメージができると思います。そのため、帰属家賃よりも家賃は上昇のタイミングが遅れていると推測できます。

上の図では、緑色の帰属家賃は上昇のピークを越えてきていますが、赤色の家賃はまだ増加しているように見えます。この家賃部分もピークアウトが鮮明になれば、いよいよCPIの本体にも大きく影響すると考えられます。


住宅市場の鈍化はインフレ抑制につながるかも

住宅市場が鈍化すれば、CPIの下落につながりインフレ抑制につながるのはほぼ間違いありません。

すでに米国政策金利の利上げ幅は12月0.5%と前回までよりも小さくなりました。しかし政策金利は5%程度で高止まりするのではないかという予想もあるため、住宅ローン金利も簡単には下落しない可能性もあります。

そうなれば、2023年以降の住宅市場は厳しい状況が続きそうです。住宅市場の状況が米国経済の実態を物語ることになるかもしれません。

米港経済の状況を知るには住宅市場を見るのも有効