政府・日銀が歴史的な円安に歯止めをかけるため異例の規模で外国為替市場への介入を繰り返している。10月（9月29日～10月27日）に実施した1カ月間の為替介入の金額は6・3兆円に達し、月間の円買い・ドル売り介入としては過去最大規模となった。市場への一定のけん制にはなっているものの根本的な円安傾向に歯止めがかかっているとは言い難い。長期戦も見込まれる中で政府の狙いは何なのか。財務省内の声や専門家の指摘から考えた。

「止められない」円安
　そもそも足元の円安はなぜ起こっているのだろうか。主因にあげられるのは日米の金利差だ。米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会（FRB）は歴史的なインフレ抑制のため今年3月以降、大幅な利上げを続けている。直近の11月2日も政策金利を4会合連続で0・75％引き上げることを決めた。

　一方で日銀は、新型コロナウイルスなどでダメージを受け、まだその影響が残っている企業が多いことから、低金利で企業の経営をしやすくして日本経済を支えることなどを目的として、現在の金融緩和政策を継続する方針を維持している。投資家は金利が高い通貨で運用した方が有利と考えるため、市場で円を売ってドルを買う動きにつながっている。

　米国との金利差による通貨安は円に限らず、各国の主要通貨も軒並み下落している。主要20カ国・地域（G20）の財務相・中銀総裁会議でも懸念材料となるなど、世界は「ドルの独歩高」の状態だ。「米国次第」とも言える中で円安・ドル高を反転させるような、抜本的な対策は日本にはないのが現状と言える。

　「為替相場は市場においてファンダメンタルズ（基礎的条件）を反映するものとして決められるもの。投機が入って急激に変動するものは家計や企業に影響を与えるので断じて容認できない」。11月2日の衆院財務金融委員会。鈴木俊一財務相は介入を続ける理由をこう説明した。

　この発言は政府の立場を端的に表している。ある財務省幹部…(以下有料版で，残り1870文字)

毎日新聞 2022/11/8 10:28（最終更新 11/8 10:28） 有料記事 2685文字
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