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不況に強い生活必需品に、暗雲が立ち込めている 

長年、個人投資家に人気のセクターと言えば「生活必需品」です。

経済学者シーゲル教授の研究からも、1957年〜2003年の生活必需品セクターはトップレベルの好成績を残していたことが判明しています。

生活必需品とはその名の通り、食品や飲料、家庭用品などに特化した商品やサービスを指します。

具体的な銘柄を指すと、バンガード社が提供する米国生活必需品セクターETFに組み込まれている株が参考になりますが、P&G、コカコーラ、ペプシコ、ウォルマート、フィリップモリス、アルトリア、コストコ、コルゲート、ウォルグリーンなどです。

これらはたとえ不景気になったとしても人々が生活を続けるために消費を続ける商品群を提供する企業なので、安定した業績を維持することが可能です。

そのため、生活必需品は長期投資向きと言われますが、ここ最近では楽観論が消失している。

たとえば、WSJやロイターなどは今年に入ってから揃って「生活必需品はディフェンシブ特性が喪失した」とのコラムを掲載した。

WSJに至っては、生活必需品セクターは資金の退避先としてもはや有効ではないと明言する始末だ。

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ポピュリズムの波により、過去の常識が通用しなくなっている 

とはいえ、歴史を遡ればリーマンショック勃発時であっても生活必需品セクターの下げ幅は確かに限定的で、影響は軽微に済んだ実績もあります。

ではなぜ、最近になってこの常識が覆る事態に陥っているのでしょう?

それは米中貿易戦争を発端とした世界的な関税戦争です。

世界ではポピュリズムの動きが強まっており、アメリカのトランプ大統領、イギリスのジョンソン次期首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平、フィリピンのドゥテルテ大統領など世界総独裁政権と化している。

世界の自由貿易を推進してきた当事国ら自身が、自由貿易やグローバル化の動きに待ったをかけようとしていることで、グローバルにビジネスを展開する企業たちが材料費高騰などの影響をモロに受けることになるのだ。

たとえば、P&Gなどは売上高の半分以上が米国外のもので、関税戦争が激化すれば業績悪化は避けられません。

不景気に陥っても、モノは売れるかもしれないが、原価が高くなりすぎることで利益を圧迫し、今までのような業績を維持できなくなる可能性が高いからだ。

これを裏付けるように、2018年の株式市場では米中貿易戦争の影響で最も暴落したセクターは生活必需品でした。

ウォール街のアナリストらは「通商紛争や輸入関税を巡る問題が再び過熱しているため、生活必需品株は公益などのセクターほど安全ではない」「生活必需品株の評価をオーバーウエイトからアンダーウエイトに見直した」「生活必需品企業は利幅が非常に薄く、追加関税でより大きな影響を被る恐れがある」と揃って警告を鳴らすなど、生活必需品セクターに後ろ向きの意見が多い。

今後、世界的なポピュリズムが加速すればするほど打撃を受けることは明白で、生活必需品セクター中心にポートフォリオを構築している個人投資家は、常にアンテナを張って世界情勢の動きを把握しておく必要があるでしょう。

バランスよくセクター分散することが大事だよね

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