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S&P500の構成銘柄の中で、過去半世紀において最も高いリターンを達成した銘柄は世界的タバコ会社のフィリップ・モリス(PM)です。

現在はアルトリア・グループ(MO)に社名が変更され、フィリップ・モリスは海外事業を担う組織としてスピンアウトされています。

ジェレミー・シーゲルの著書「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」では、フィリップ・モリスが最高のリターンを達成した理由を相次ぐ訴訟による悪材料で、常に上値を抑えられていたからだと分析しています。

つまり、企業にとっての悪材料は株価下落のマイナス要因として作用しますが、長期投資家にとってみれば優良銘柄をより安く、より多く買い増し出来る絶好の機会になるということです。

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シーゲル氏は、フィリップ・モリスが最高のパフォーマンスを達成するまでのプロセスを、以下の通り述べています。

1960年代、タバコ業界の中でフィリップ・モリスの売上は最下位でした。しかし、1972年に「マールボロ」をリリースしたことにより一躍売上No.1企業となり、当時最も勢力を保持していたタバコ会社を買収してしまうほど急成長します。

フィリップ・モリスは買収を続け、利益を伸ばし、タバコ以外のビジネスにも積極的に進出していきました。1957年から1992年にフィリップ・モリスに投資していた投資家は、年率22%という驚異的なリターンを得ることに成功したのです。

ただ、その後のフィリップ・モリスは「訴訟の歴史」と言ってもいいくらい、訴訟により企業や株価が翻弄し続けられました。

訴訟という最悪のマイナス材料を理由に、常に株価が上値を抑えられていたからです。1998年にタバコ会社は"喫煙に関連する疾病治療費"の賠償額を、25年間に渡り支払うなど、タバコ会社の大きな負担となっていました。

フィリップ・モリスはこの賠償金に1,000億ドル(およそ10兆円)を負担することになってしまい、致命的な経営ダメージを被ります。

訴訟は相次ぎ、1999年にはアメリカ政府がタバコ会社を訴えるという前代未聞の事態が起きたのです。結局、フィリップ・モリスは敗訴し、740億円(およそ7兆4,000億円)の支払いを命じられてしまいました。

更に訴訟は続き、2001年には元喫煙者に対して30億ドル(およそ3,000億ドル)の賠償をすることになりました。この事例が他の訴訟の見本となる痛恨の判決であったため、タバコ会社は軒並み破綻の道を辿る懸念が浮上したのです。

まだまだ訴訟は終わりません。続いて、2003年には商品名に「ライト」を採用したことで消費者の誤解を招いたとして100億ドル(およそ1兆円)と、120億円(およそ1兆2,000億円)の保証金の差し入れを命じられています。

莫大な訴訟費用、タバコ増税、イメージ悪化など、フィリップ・モリスは投資家から見放されて、常に株価が低迷していました。

12年の間で、S&P500は380ポイントから800ポイントという2倍以上の上昇を見せていましたが、フィリップ・モリスは28ドルから28ドルに終わるという事態に陥っていたのです。このまま訴訟が続けば、フィリップ・モリスは破産する道しか残されていなかったのです。

しかし、この間にフィリップ・モリスを信じて投資し続けた投資家は、最も高いリターンを得ることに成功しました。

なぜなら、訴訟に明け暮れた10年以上、フィリップ・モリスは一度も減配することなく増配を続け、株主に利益をもたらしたからです。

投資家はフィリップ・モリスの株価が低迷していたことで、より安く、より多く買い増し出来る絶好の機会となっていたわけです。

1992年から2003年にかけて配当再投資を根気よく続けた投資家は、この間に保有株が倍以上に増えており、株価が上昇しなくとも年率リターンが7.15%という水準を維持できたのです。

株価が上昇しなくとも、配当再投資のみでこれだけのリターンが投資家にもたらされたわけですから、いざ株価が上昇することになれば、それはそれは計り知れないインパクトを持つことを意味します。

実際、「ライト」の訴訟で120億円(およそ1兆2,000億円)の保証金の減額を裁判所に認められたフィリップ・モリスの株価は、28ドルから50ドルまで一気に駆け上がっていきました。

つまり、「なぜフィリップ・モリス(PM)株が最も高い投資リターンを達成したのか?」の答えは、株価低迷時にも根気よく配当を再投資し続けたからに他なりません。

長期投資家は、目先の株価に一喜一憂することなく、配当を愚直に再投資しなければならないのはこのためです。

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